ユウコというペンネームで4人の子のお母さんのブログに載っていた記事です。

ユウコさんの三男が小学1年生の夏休みの研究で、おもしろい実験をしたそうです。
2つの瓶それぞれに炊き立てのごはんを入れて、1つの瓶には「ありがとう」と書いた紙を貼り、もう1つの瓶には何も貼らなかったそうです。
実験を始めた7月20日の写真には2つの瓶を持っている少年が映っていました。
そして有難うと書かれた瓶には毎日「ありがとう」と声をかけ、もう一つの瓶には何も声をかけずに無視し続けたそうです。

そして20日たった8月10日には、ありがとうと書かれた瓶のごはんは白いつぶつぶのままでしたが、無視し続けた瓶のごはんは腐っていました。
8月10日の写真を見ても、2つの瓶の状態は明らかに異なっていました。
そして8月20日にはありがとうのごはんは白いままでしたが、無視しているごはんはドロドロになり、
8月30日にはありがとうのごはんはそのままなのに、
無視している瓶のごはんは、もはや液状になっていました。
その時の写真もブログに載せてありました。
そして、夏休みが終わって三男が2つの瓶を学校に持ってゆくと、先生も驚かれたそうです。

その後その瓶はまた家に持ち帰られたそうですが、何かの拍子に瓶が2つとも下に落ちてしまったそうです。
すると無視していた瓶が割れてすごい悪臭がして大騒ぎになりました。
ところがありがとうの瓶は割れなかったそうです。

そこで今度はお母さんであるユウコさんがそのありがとうの瓶のごはんに毎日「ありがとう」と語り続けたそうです。
時には実家に帰らなくてはいけないことがあり、一泊家を空ける時には瓶にこう言ったそうです。
「腐らずに待っていてね」と。
そして5か月たった12月にユウコさんは、そのありがとうのごはんを土に還すことにしたそうです。
瓶の蓋を取ると、ありがとうのごはんは発酵していたそうです。
ユウコさんはそれを土に還す時、「ありがとう」と言いながら涙が流れたそうです。

他にもリンゴにはいつも微笑みかけ、もう1つのリンゴには非難、罵倒し続けると、悪態をつかれたリンゴはすぐに腐るのに、
微笑みかけられたリンゴはいつまでも腐らないとか、そういった話はよく耳にします。
このことを思うと、食前には合掌して「いただきます」と言って食物をいただくことや、
食べ終わったらまた手を合わせて「ごちそうさま」と言うことも単なる昔からの習慣だけではないということが判ります。

どのような物にも命があるというのが佛教の教えです。
「多くのいのちと、みなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきます」
これが浄土真宗の食前の言葉です。

また朝夕お仏壇の前で手を合わすことの大切さもうなづけます。
朝夕の感謝で一年に730回のありがとうになります。
また年に一度の家での報恩講も、この人生一年一年と積み重ねてゆく大切なありがとうの仏事です。

私たちはいずれこの世界を離れますが、ありがとうのごはんのように、最後は佛土に還らせて頂きましょう。

浄土真宗本願寺派 教専寺 福間義朝 『赤口』より