7月26日、相模原市の津久井やまゆり園で、元職員が入所者を次々に刺し、19人の方が死亡、25人の方が思い傷を負われました。
その加害者はその事件の前に、「障がい者は不幸を作ることしかできません」と衆議院議員に手紙を送っていました。
またこのニュースの後、インターネットには「障がい者は生きていても何の役にも立たない」といった意見が多く載せられるようになりました。
これに対して障がいをもつ娘の父親で和光大学の名誉教授である最首悟(さいしゅさとる)さんは次のように語っておられます。
「今の日本社会の底には、生産能力の無い者を社会の敵とみなす冷め切った風潮がある」と。

私は以前赤口にも書いた「4分の1の軌跡」という話を思い出しました。
これはアフリカのある村で、マラリアという伝染病が猛威をふるい、村は壊滅的な打撃を受けてしまいます。
しかし、どんなにマラリアが蔓延しても必ず生き残るグループがいました。
後年、なぜそういうことが起こるのか、多くの研究者が徹底的に調査いたしました。
すると1つの事実が分かりました。それはマラリアが発生する地域では、ある一定の割合で伝染病に強い突然変異の遺伝子を持つ人がいるということです。
この人たちの赤血球は鎌状になっているのです。そしてその鎌状の赤血球を持つ人には、4分の1の確率で体に思い障がいをもって生まれる人がいるのです。
つまり4人兄弟がいるとそのうち1人は障害を持って生まれるということです。
このことから人間がマラリアとの生存競争に勝つには、マラリアに強い遺伝子の他に、障害を持つ遺伝子も必要だったということが判ったのです。
障がいを引き受ける人がいなければ、その村は全滅していたのです。

このことを伝えている人が全国で講演をされている石川県の特別養護学校の山元加津子先生です。
そこにはその学校にいた雪絵ちゃんとの約束があったからです。
難病で亡くなった雪絵ちゃんは、生前山元先生に何度もお願いしていました。
「病気や障がいがとても大切だということ。みんなが素晴らしい役割を持っていること。それが科学的に証明されているということを世の中に世の中に伝えて。」と。
山元先生は言われます。
「私たちが元気に明日に向かって歩くことができるのは、病気や障がいを持ちながら、その為に苦しみながらも毎日頑張ってくださる方がおられるお陰です。」

仏教では縁起という教えがあります。
自分の生命に無関係というものは無いということです。
目に見えない、自分では思いもしない無限のお陰の中に自分の生命が生かされているということです。
過酷な自然環境の中で人間が生きながらえてこれたのは、そこには様々な役割があったと思われます。元気で強い者が生ずる場合、その反対では病気や障がいも必要とされます。
それが自然界のバランスです。

福岡放送の記者、神戸さんは長男が自閉症です。その神戸さんがこのように寄稿しておられます。
「息子よ。君は弟の変わりに、同級生の代わりに生害を持って生まれてきた。人生の最後は誰も動けなくなる。誰もが次第に障がいを負いながら生きてゆくのだね。息子よ、あなたが指し示していたのは、私自身のことだった。」

浄土真宗本願寺派 教専寺 福間義朝 著『赤口』より